ミラノ伝統スタイルのパネットーネ 「モリノ オーロ グラーノ」工房訪問

2020年6月に東京・王子にオープンしたベーカリー「ピストリーナ・ディオ」はイタリアのパンや発酵菓子にも力を入れているユニークなお店。親会社がイタリアの製粉会社「モリーノ・ダッラジョヴァンナ」の粉を輸入しているため、コルネッティやスフォリアテッラ、セモリナ粉のパンなど本格的に作っており、そしてもちろん、パネットーネも店頭に並んでいます。
パネットーネは基本的に通年製造。ただ、他のパンと違い、パネットーネ(そしてコルネッティなど発酵菓子パン)はいわゆるイーストではなくリエヴィト・マードレ(自家培養発酵種)を使うため、店内の工房ではなく、同じく王子にある本社「モリノ オーロ グラーノ」のラボで作り、「ピストリーナ・ディオ」で販売しています。そのラボにお邪魔し、パネットーネの製造工程を見せていただきました。

「モリノ オーロ グラーノ」のパン職人森嶋かな子さんは、イタリアで研修を受け、2008年よりリエヴィト・マードレを使ったパン作りを行なっています。そのリエヴィト・マードレは、イタリアに行った折りに持ち帰ったり、取り寄せたりして、「モリーノ・ダッラジョヴァンナ」社のパネットーネ専用粉を使って種継ぎをしています。温度などの管理を徹底していても、空気中の雑菌の影響で香りが変わったり、酸が強くなったりすることがあり、そうなるともう廃棄するほかはありません。

リエヴィト・マードレは厚手の丈夫なポリ袋に入れ、キャンバス布で包み、細いロープでがっちりと縛って冷蔵庫で保存。パネットーネを作る前にそのマードレを必要量切り出し、微量の砂糖を溶かしたぬるま湯に浸けて洗浄し、水気を軽く絞った後、小麦粉を混ぜてミキサーで練ります。さらにそれを手で練り、発酵させてからパネットーネの生地作りに使うのです。

パネットーネの製造工程は、その細部は作り手によって多少の違いがありますが、基本的には発酵させたリエヴィト・マードレに砂糖、水、粉、卵黄、バターを加えてプレインパスト(準備生地)を仕込んで発酵させた後、再び、粉、砂糖、卵黄、バター、塩、香料(バニラ)、砂糖漬けフルーツやレーズンを加えてインパスト(本生地)を仕込み、発酵、分割、成型、最終発酵、焼成、冷却という段階を辿ります。通常は、プレインパストを一日目の夕方に行い、二日目はインパストから焼成、そして翌朝まで冷却という、ほぼ二日をかけますが、生地を途中で休ませたり、低温発酵させるなど、さらに時間をかける作り手もいます。いずれにしても、夕方に仕込んで朝焼いて完成する一般のパンよりもずっと手間と時間がかかるのです。しかもリエヴィト・マードレの発酵という前段階がある上に、リエヴィト・マードレそのものの管理にも気を使います。それだけにオーブンの中でぐっと生地が伸び上がってくる瞬間は、毎度のことながら達成感を感じると森嶋さん。ゆっくりと冷ましたパネットーネは、乳酸の香りがしっかりとした、ミラノ伝統のパネットーネに忠実な味わいです。