ヴェネト州ヴィチェンツァ県アルツィニャーノのパスティッチェリア「オリヴィエリ1882」から届いたパネットーネをテイスティング。そのレポートをお届けします。
創業140年という老舗のパスティッチェリアの家系に生まれたニコラ・オリヴィエリは、幼い頃から焼きたてのパンや菓子に魅了され、どうしたらもっと美味しくなるだろうと日々研究を重ねてきました。2010年、24歳の時にオーストラリアのメルボルンに移り、ペストリーシェフとして研鑽を積むうちに、発酵の世界の面白さの虜になります。イタリアに戻り、2012年に「オリヴィエリ1882」の製造責任者となったニコラは、パネットーネをはじめとする発酵菓子のブラッシュアップに取り組みます。また、伝統的な丸型だけでなくバウレットと呼ぶローフ型のパネットーネや、フレーバーもチョコ&洋梨、ホワイトチョコ&森のベリー、3種のチョコレート、りんごとレーズンとシナモン、アプリコット&塩キャラメルなど、さまざまなバリエーションを展開してきました。その姿勢は多くのガストロノミーメディアに注目され、ミラノで毎年開催されるトップガストロノミーのカンファレンス『イデンティタ・ゴローゼ』での講師やTV番組での料理マスターコースの指導者を務めるなど、発酵菓子の最先端伝道師としても活動。そして彼が作るパネットーネは数々の賞を獲得し、特に、食の総合メディア『ガンベロ・ロッソ』からはパネットーネ・アルティジャナーレ(手作りのパネットーネ)最高賞並びにコロンバ・アルティジャナーレ最高賞を受賞しています。
ニコラは、パネットーネはクリスマスのお菓子だからという固定観念にとらわれず「良いものは一年中求められる」と通年製造。真っ白で統一されたモダンなカフェ・パスティッチェリア「オリヴィエリ1882」はいつもパネットーネやそのほかの菓子、パンを楽しみに訪れる人で賑わっています。
さて、本題のパネットーネですが、発酵菓子の最先端を行くだけあって、非常に繊細でなめらかな生地が特徴。乳酸菌の香りは控えめで、そのぶん、バニラやオレンジの香りがふわっと立ち上ります。レーズンもみずみずしく、生地の食感とのバランスが絶妙。全体のバランスも良い、優美なパネットーネです。
Tasting Memo
名称:パネットーネ・クラッシコ
メーカー:オリヴィエリ1882 Olivieri1882
原材料:小麦粉、バター、卵、オレンジピール(18% オレンジ、砂糖、水)、サルタナレーズン、蔗糖、リエヴィト・マードレ(水、小麦粉)、水、パスタ・ダ・アランチャ(オレンジ、砂糖、水)、アカシア蜂蜜、塩、タヒチ産ブルボンバニラ
重量:900g
試食日:2021.02.27
賞味期限:2021.04.08
①見た目
色:クロスタは薄すぎず焦げすぎず綺麗な黄金色。中はかなり黄色が強い。
気泡:気泡は縦に綺麗に伸びている。決定的な大きな穴はない。
砂糖漬けフルーツ:オレンジピールは1cm角くらい。レーズンとほぼ同じ大きさ。量はレーズンに比べやや少なく感じる。
②香り
新鮮さ:もうしぶんない。
発酵種:乳酸菌的な香りはやや弱め。
砂糖漬けフルーツなど:バニラの香りがまず先に立ち、そしてオレンジの香り。
③触感
柔らかさと弾力性:触った感じはかなり柔らかい。軽く押すとすぐにほぼ戻り、1分くらいで完全に戻る。繊維:縦に細く剥がれるように裂ける。
④味わい
柔らかさと口どけ:口に入れた瞬間、とにかく柔らかいと感じる。解けるような感じではなく、噛むと抵抗なくつぶれ、小さくなっていく。
甘み・鹹味・酸味のバランス:甘みの中に、ほのかな塩味を感じる。生地自体の酸味はかなり少ない。
⑤全体評価
非常に繊細な生地という印象。リッチだが、ほどほどで食べ疲れしない。レーズンは大粒でみずみずしく、オレンジピールはもっとあってもいいと思ったが、存在感があるので、この程度がやはり妥当かもしれない。クラシックの域を絶妙のバランスで保ち、行きすぎた軽さやしっとり感ではない。テクニックの高さを感じさせる。