毎年12月初めに発表される、イタリアの食の総合メディア「ガンベロ・ロッソ」がブラインドテイスティングで評価したパネットーネ・アルティジャナーレ・ランキング、今年も去年に引き続きトップは「レナート・ボスコ」でした。そのほかのラインナップも前回とあまり変化がない、言うなれば安定したランキングでしたが、今年は番外編として、トレンドのパネットーネ・サラート(塩味)をピックアップ。おすすめ銘柄が紹介されました。
パネットーネ・サラートはもちろん伝統的パネットーネではありません。ただ、職人にとってはクリエイティビティを自由に発揮できる上、クリスマスに限らず通年楽しんでもらえるパネットーネとして提案できるところがポイント。また、アペリティーヴォという、食前酒と共におつまみを楽しむ習慣があるイタリア人にとっても、ちょっと趣向を変えた特別感のあるアペリティーヴォにしたいときにパネットーネ・サラートは格好の選択肢です。
今回「ガンベロ・ロッソ」は、基本的な生地の完成度が高く、そして、地方の特産品を副材料として使用しているパネットーネ・サラートに注目しています。地方性、郷土色を重視するイタリアらしい評価基準です。
- Antica Pasticceria Castino 「ペペローニ&アッチューゲ」
ピエモンテ料理ではお馴染みのペペローニ(パプリカ)とアンチョビの組み合わせ、レモンの香りを効かせている。そのほか、「ペスト・ジェノヴェーゼ、ミニトマト、タジャスカオリーブ」、「ゴルゴンゾーラとフライドオニオン」も。
フリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州の伝統を踏まえたバリエーションを展開。「フリコ&コーンフラワー」はチーズとじゃがいもを使う郷土料理フリコがテーマ。「スペック、赤玉ねぎ、チーズ」はそれぞれの素材の産地や生産者を明記。「トマト、バジリコ、カプリーノ」はトマトの赤とバジリコの緑のツートーンで、カプリーノチーズの風味でコクをプラス。
- Pasticceria Mazzali 「タルトゥーフォ・ビアンケット」
ロンバルディア州マントヴァの土地の特産品デルタ・ポーのビアンケット・トリュフを使った「ペピータ・デル・ポー(ポー川の珠玉)」。ノーマルのパネットーネの他、長期保存可能な密閉容器焼成(ヴァゾ・コットゥーラ)も。そのほか、洋梨とゴルゴンゾーラの「パン・ペーレ&ゴルゴンゾーラ」、小玉ねぎとミニトマトの砂糖漬け、パルミジャーノ・レッジャーノ、アーモンド、ローズマリーの「コルティジャーノ」も。
- Olivieri 1882 「オリーブ、チョコラート・ビアンコ、ロースマリー」
パネットーネ・ソサエティではお馴染みのオリヴィエリ1882が2023年限定バージョンとして発売したのは、料理人とコラボレーションした、砂糖漬けオリーブ、ホワイトチョコレートとローズマリーの組み合わせ。
- Pasticceria Biasetto 「ペペローニ・コンフィ&チポッラ・ディ・トロペア」
パネットーネ界の重鎮の1人、ルイジ・ビアゼットが提案するのは、パプリカのコンフィとトロペア産赤玉ねぎを使った甘酸っぱさがコントラストを奏でるパネットーネ・サラート。ビアゼットは、食べる時にシブレット、塩、胡椒を加えたヨーグルトソースを添えるとなお美味しいとコメント。そのほか「アンチョビ、ケイパー、セミキャンディドのりんご」、「ペスト・ジェノヴェーゼとミニトマトのコンフィ」も。
- Pasticceria Opera 「ラディッキオ・ロッソ・ディ・トレヴィーゾIGP」
ヴェネト州トレヴィーゾが誇るIGP食材ラディッキオ・ロッソを20日間かけて砂糖漬けに。パネットーネの他、プラリネチョコ、ザエティ(ヴェネト州のビスコッティ)、ジャム、甘いポレンタ菓子などにも使っている。
- Forno Brisa 「モルタデッラ&パルミジャーノ・レッジャーノ」
エミリア・ロマーニャ州ボローニャの先進的なベーカリーとして知られる「フォルノ・ブリーザ」は、ボローニャ名物モルタデッラのダイスカットをパルミジャーノ・レッジャーノ風味の生地に練り込んだ。
- Pasticceria Rigacci ’48 「ザッフェラーノ&ズッカ・カンディータ」
トスカーナの「パスティッチェリア・リガッチ’48」は、サフランの香りと自家製のかぼちゃの砂糖漬けを主役に、パルミジャーノ・レッジャーノ、熟成ペコリーノ、黒にんにくをプラス。
- La Fenice Pizzeria Contemporanea 「サルーミ・ディ・チンタ・セネーゼ&ペコリーノ・ディ・グロッタ」
トスカーナのピッツァイオーロが1年かけて完成させたのは、トスカーナのDOP食品であるチンタ・セネーゼ豚のサラミとチッチョリ(屑肉を揚げて乾燥させたもの)、洞窟で熟成させたペコリーノ、タジャスカ種オリーブのクランブル、モライオーロ種のEVオリーブオイル、花椒を組み合わせたパネットーネ・サラート。
- パスティッチェリア・ルカ・マンノーリ 「ペコリーノ・ディ・ピエンツァ&モルタデッラ・ディ・プラート」
イタリアを代表するパスティッチエレの1人、ルカ・マンノーリの「パン・プラート」は、地元トスカーナ州プラートの食材がテーマ。プラートIGPモルタデッラとピエンツァ産のペコリーノを主役に、赤・黄パプリカのセミキャンディド、ドライトマト、黒オリーブ、さらに粉とEVオリーブオイルも地元産。
- Beatrice Volta Pasticceria 「パッパ・アル・ポモドーロ」
コンテストで幾度も入賞している「ベアトリーチェ・ヴォルタ」は、トスカーナをテーマとしたパネットーネ・サラートを発売。伝統料理をテーマとした「パッパ・アル・ポモドーロ」はトマトペースト、にんにく、玉ねぎ、ドライトマト、バジリコで構成。その他トマトとパンチェッタの「アマトリチャーナ」、サフランとペコリーノの「ミラネーゼ」も。
- Pasticceria Angelo Grippa 「パンチャウリエッロ」
カンパーニア州の菓子職人アンジェロ・グリッパは、塩漬け黒オリーブ、ドライトマト、砂糖漬けにんにくの「パンチャウリエッロ」を提案。また、プーアール茶、キオディーニ(きのこ)の砂糖漬け、マロングラッセ、エクアドル産カカオ72%チョコレート、オレンジペースト、アカシア蜂蜜の「パナルブルニ」も。
- Pasticceria Sparaco 「パンチェッタ&カチョカヴァッロ・ジェラルキコ」
カンパーニア州カゼルタの菓子職人グイド・スパラーコの「パン・アルキコ」は、農家の伝統へのオマージュとして、地元産のEVオリーブオイルを使い、地元産の白豚のパンチェッタ、干し草の上で熟成させたカチョカヴァッロ「ジェラルキコ」を主役にしている。
- Pasticceria De Vivo 「パンカポナータとその仲間たち」
パネットーネで知られるカンパーニア州の「パスティッチェリア・デ・ヴィーヴォ」からは、地元アジェロラ産プロヴォローネとポルチーニのパネットーネ、クリスマスイブの食卓に欠かせないというチェターラのイワシとパパチェッレ(ピーマンの一種)の一皿をテーマにした「パンディリフォルツォ」、ナポリの庶民の料理へのオマージュとして、ドライトマトとオイル漬けのナスを練り込んだ「パンカポナータ」、海水、ガエタ産オリーブ、スモークサーモンを使った「パンサルモーネ」、さらに「パネットーネ・タルトゥーフォ&卵のソース」という高級バージョンも。
- Anna Belmattino 「マルゲリータ・リエヴィタータ」
カンパーニア州のアンナ・ベルマッティーノも地元へのオマージュ・パネットーネ・サラートを展開。トマト、バジリコ、モナコ・プロヴォローネのパネットーネ「マルゲリータ・リエヴィタータ」にはトマトソースも別添えで販売。スカローラ(レタスのような葉物野菜)、ドライトマト、ペコリーノの「ピッツァ・ディ・スカローラ・リエヴィタータ」、そして、グリルしたパプリカ、燻製バター、オリーブ、カリフラワー、サフラン、ストラヴェッキオ・ディ・カプラ(山羊のチーズ)のパネットーネも。
- Pregiata Forneria Lenti 「パンカポコッロ」
プーリア州の菓子職人エマヌエレ・レンティとチステルニーノのサラミ工房のコラボレーションで誕生したのは、マルティーナ・フランカ産カポコッロ(豚肩肉ハム)、レンゲ蜂蜜、オレンジペーストを使った「パンカポコッロ」。
- Dolceria Sapone 「パネットーネ・コン・チポッラ・ロッサ・ディ・アックアヴィーヴァ」
プーリア州のエウスタキオ・サポーネが提案するのは、アックアヴィーヴァ産赤玉ねぎを砂糖漬けにし、ホワイトチョコレートとレモンゼスト、野生のフェンネル、バニラと合わせたパネットーネ。
- Marco Magrì 「ンドゥヤットーネ」
カラブリア州の名物唐辛子を練り込んだ半生サラミ、スピリンガ産のンドゥヤを使った「ンドゥヤットーネ」。RTDのマルガリータとのセット販売も。
- Pasticceria Giulio 「パン・ジュリーヴォ」
シチリアからは、アペリティーヴォ向けのパネットーネとしてそのまま、あるいはサラミやチーズとともに味わってほしいと生まれた「パン・ジュリーヴォ」が登場。EVオリーブオイル、黒オリーブ、トマト、赤パプリカ、ズッキーニを使用。
- Nuovo Dolceria 「パネットーネ・シクル」
レーズン、砂糖漬けオリーブ、砂糖漬けミニトマトというシチリアの食材を主役にした「パネットーネ・シクル」。イブレア産EVオリーブオイル、砂糖漬けのオリーブ、アーモンドを練り込み、アーモンドのグラッサ(アイシング)を施した「パンオリオ」も。
文字からでは味の想像も難しいものもありますが、イタリア人にとっては興味深いものばかり。日本でも日本の食材を使った自由なパネットーネ・サラートの可能性は無限大でしょう。