歳末のミラノから発信されている「パネットーネ・ソスペーゾ」とは?

師走のこの時期、「歳末助け合い運動」という言葉が聞かれたのは昭和の頃かもしれませんが、その精神、イタリアではまだまだ健在です。みんながクリスマスを祝うためにパネットーネを求めているのに、それを買う余裕がない人たちに、寄付を元にパネットーネを贈るというのが、「パネットーネ・ソスペーゾ」NPOの活動。この団体はミラノ市の後援を得て昨年設立され、1644個のパネットーネが希望する人に届けられました。今年はパンデミックの影響で困窮する人たちが増えており、このNPOはさらなる寄付を呼びかけています。

ところで、このソスペーゾという言葉は「吊るされた、保留にされた」という意味ですが、その前にひと言加えた「◯◯・ソスペーゾ」の発祥はナポリ。彼の地では、“カフェ・ソスペーゾ”という慣習があり、それは、バールでコーヒーを飲んだ時に自分の分に加えてもう一杯分のコーヒー代を払い、コーヒーを飲みたくても払えない人が来た時のために前払いする、というものです。この慣習はピッツェリアでも取り入れているところがあり、ピッツァ・ソスペーザとして1枚分余計に払うことで、“食べたい誰か”に差し出すことができるのです。

このパネットーネ・ソスペーゾでは、12月7日から22日までの間、賛同する15のお店でパネットーネ1個分の代金を払うと、ミラノ市が運営する、暮らしに困る人々が身を寄せたり食事することができる支援場所にパネットーネが贈られる仕組み。さらにこの15店では、寄付された1個につきもう1個をプラスして寄付することになっています。また、今年からは、お店に行くことができない人でもオンラインでソスペーゾ寄付ができるようになりました。一年の最後に、パネットーネを食べることができる喜びを、等しく味わいたいという思いから生まれた活動です。