伊勢丹新宿店イタリア展続報:1795年ペルージャに創業の老舗パスティッチェリアのパネットーネ

イタリア半島のほぼ中央に当たるウンブリアは、イタリアでは珍しく海のない州です。州都ペルージャは古代エトルリア文明の趣を残す、古式ゆかしい都市。1795年、ペルージャ郊外のフォリーニョに創業したアンティカ・パスティッチェリア・ムッツィは、時代と共に他社との合併も経て、イタリア国内では中堅規模のパスティッチェリアに成長し、現在に至っています。パッケージには老舗らしいクラシックな雰囲気が漂う、伝統の良さと現代的安定感を併せ持つ菓子ブランドです。伊勢丹新宿店のイタリア展での紹介は今回が初。定番の一番人気であるクラシックタイプのパネットーネ、近年人気急上昇している洋梨とチョコレート味のパネットーネ、そしてパンドーロの3種類が三越伊勢丹のオンラインストアで予約販売中です。

昨年12月、パネットーネ ソサエティでは11種類のパネットーネテースティングを行なった折に、<ムッツィ>社の2種類のパネットーネを試食しました。試食した感想も合わせてご紹介いたします。

クラシックタイプの生地は、黄色が濃く鮮やかです。生地に大きな気泡はないものの、中程度の気泡が不規則に、全体的に見られます。<ムッツィ>社の自家発酵種リエヴィト・マードレは、80年もの長きに渡り継いできた種で、甘いバニラやフルーツ香の中にも、確かな乳酸発酵の香りがあります。

味わいはしっかりと甘く、ヨーグルトの様な甘酸っぱさも少々感じます。柑橘の砂糖漬けの甘味、レーズンの香りや甘味もインパクトがあり、イタリアの古き良きパネットーネという印象です。

昨年のテースティングでは、ロゼのフランチャコルタと合わせましたが、パネットーネの甘さに対してドライすぎず、果実の甘みのあるフランチェコルタとは、非常にチャーミングなペアリングでした。

こちらはコンテンポラリータイプのパネットーネで、洋梨とチョコレートの組み合わせは、イタリアでは大変人気。他のパネットーネメーカーでもよく見られます。

生地にはチョコチップがたくさん入っており、乳酸の香りが隠れるほど濃厚なチョコレートが香ります。洋梨の芳香とあいまって強い香気。化粧をバッチリ決めたイタリア女性の様な雰囲気です。

洋梨とチョコレートのパネットーネには、ヴァルポリチェッラ リパッソという独特の製法のワインを合わせました。リパッソ(再び濾す)は、乾燥したブドウの絞り粕をヴァルポリチェッラ(ブドウ品種)のワインに浸漬するので、ブドウのエキスが濃厚に感じられ、酸や甘味との相性が良いと思います。

パンドーロはヴェネト州ヴェローナ生まれのクリスマス菓子。ヴェネトには昔からナダリンと呼ばれる発酵菓子があり、パンドーロはその改良版として19世紀後半に生まれたと言われます。ドライフルーツなどは使わず、発酵種とバターと卵、小麦粉、砂糖、バニラだけのシンプルな生地。卵とバターがもたらす濃い黄色が黄金を思わせ、パンドーロ(黄金のパン)の名にふさわしいリッチな味わいです。現地の習わしに従って粉砂糖を雪のようにふりかけて楽しみましょう。

 

伊勢丹新宿店のイタリア展ECサイトでの販売は9月20日午前10時まで。イタリア展会場での販売はありません。