パネットーネ・コンテストin Japan 2022 結果発表

11月21日に一次審査、24日に最終審査を行ったパネットーネ・コンテストin Japan 2022。リエヴィト・マードレ(自家培養発酵種)を用いたミラノ伝統クラッシコ・パネットーネをテーマにした今回のコンテストでは、一次審査で選出された7作品が最終審査に臨み、最優秀賞作品が決まりました。

 

最優秀賞

秋元英樹氏「ブーランジェリー・コシュカ」/東京都世田谷区

優秀賞 (五十音順)

阿部之彦氏「トラットリア・デッラ・ランテルナ・マジカ」/東京都品川区

上原 力氏「TAK BAGERI CAFÉ」/鹿児島県鹿児島市

大村 田氏「ヴァンダラスト」/群馬県太田市

坂田純一氏「ウルス/クマパン屋」/神奈川県藤沢市

鈴木美影氏「ケノヒノパン」/東京都中野区

中村友彦氏「マンダリン オリエンタル 東京」/東京都中央区

左より、鈴木美影氏、阿部之彦氏、大村田氏、坂田純一氏、上原力氏、中村友彦氏

 

 

審査は以下の方々によるブラインドテイスティングで行われました。

審査委員長:鈴木弥平氏(「ピアットスズキ」オーナーシェフ)

特別審査員:ニコラ・オリヴィエリ氏(「Olivieri 1882」オーナー)

審査員 (五十音順)

池田浩明氏(パンの研究所「パンラボ」主宰)

白根慶治氏(ルーツ貿易株式会社 代表取締役社長)

羽根典子氏(フードジャーナリスト)

平岩理緒氏(スイーツジャーナリスト)

山根 証氏(株式会社ツジ・キカイ 代表取締役社長)

 

それぞれの作品の審査総評は以下のとおりです。

最優秀賞

秋元英樹氏作品

焼き色は透明感を持って輝き、内側は強い黄色。生地も縦伸びしており、繊維のような裂け方もよい。気泡が伸び、半透明になっているのが美しい。濃厚な乳酸の風味とさわやかさを兼ね備え、噛み応えが程よく口溶けがよい。さらに味わいが強く個性を感じさせられるようになれば完璧。

 

優秀賞(五十音順)

阿部之彦氏作品

外観は美しいドーム型、クープも綺麗に出ている。焼き色はやや濃すぎ、内側の色もややくすみが見られる。気泡はやや細かく偏りがあるが、生地の繊維感はあり、縦に裂ける。さわやかで、かつ香ばしい香り、柑橘の味わいが生地に馴染み、余韻がある。味わいの強さという点ではイタリアに近い。

 

上原力氏作品

外観はボリュームがあり、生地がしっかりと伸びている。焼き色は均一で濃く、香りにも影響している。灰分の高いもち小麦粉を使用しているためか色はくすんでいるが、味わいは深い。食べ応えはしっかりあり、繊維のほぐれ具合も良い。外観、内層ともに素晴らしいが、香りと味わいがさらに欲しい。

 

大村田氏作品

外観は伸びがあり、ボリューム十分。焼き色は薄めだが均一。内側の色は明るい黄色。フルーツは均一に散らばり、量も多い。柑橘の風味に個性を感じ、インパクトは強いが、そのほかの香りがやや弱い。生地の繊維感はあり、テクスチャーはやや固め。全体的にはバランスがとれ、レベルは高い。

 

坂田純一氏作品

焼き色はやや薄いが輝きがある。十字のクープが綺麗に入り、ボリュームがあるが、側面の凹みが惜しい。内層は気泡が縦に伸びているのは良いが、繊維があまり見られれないのが残念。食感はやや重く、生地はやや粉っぽさを感じる。フルーツはみずみずしく、全体的な風味・味わいは良い。

 

鈴木美影氏作品

外観は十分な膨らみが見られ、焼き色は明るく均一、内層の気泡は小さめ。生地はしっとりしていてバターの風味が強く感じられ、噛み応えは控えめ、口の中でねっとりとした食感が残る。蜂蜜、バニラの香りが印象に残り、レモンピールは強いが、そのぶんオレンジの存在感がおとなしい。

 

中村友彦氏作品

十字のクープが大きく広がり、伸びやか、焼き色はほとんど均一。内側は明るく輝くレモンイエロー。気泡は大小がバランスよく見られ、蜂の巣状になっていて素晴らしい。食べた感じは生地がやや乾いており、また、酸味も若干強く感じる。外観、内観は素晴らしいだけに風味が改善されれば無敵。

 

受賞者のプロフィール

秋元英樹(あきもと ひでき) ブーランジェリー・コシュカ

「ペルティエ」「ユーハイム」「ミクニ」で製パンの修業を重ね、2007年に独立、世田谷区深沢にBoulangerie Koshuka (ブーランジェリー・コシュカ)オープン。 イタリアのパネットーネを食べたのをきっかけにパネットーネに取り組み始める。日本ではあまり情報がなかったため、2018年よりたびたび渡伊。素晴らしいマエストロ達に出会い、ヒントをもらいながらパネットーネの研究を日々重ねている。

 

阿部之彦(あべ ゆきひこ) トラットリア・デッラ・ランテルナ・マジカ

イタリア本場のトラットリアの雰囲気を楽しめる「トラットリア・デッラ・ランテルナ・マジカ」の開業時(2005年)から料理長を長く務める。料理以外にもイタリアの本物を目指そうと始めたパネットーネ作りは現在13年目。2022年に料理長を退き、現在は実店舗とネットショップの運営、ラボラトリオでの商品開発に力を注いでいる。

 

上原 力(うえはら ちから) タックバゲリ カフェ

鹿児島市の高校を卒業後「織田製菓専門学校」(東京・中野)で製パンを学ぶ。「浅草ビューホテル」(東京・台東)を経て、「ムッシュイワン」(立川市)にオープニングスタッフとして入社、8年間勤務。2014年5月、鹿児島市武岡に16席のカフェスペース併設のベーカリー「TAK BAGERI CAFE」(タック バゲリ カフェ)を開業。生活に溶け込める様々なパンを提案している。

 

大村 田(おおむら でん) ヴァンダラスト

ベーカリー「ヴァンダラスト」(群馬県・太田市)のオーナーベイカー。「地域の縁側」を目標に、店ではワークショップや音楽会なども実施。あんぱん・甘食から、パンオ ルヴァン、ロッゲンシュロート、パネットーネまでバラエティ豊かなパンを提供。ドイツ・デュッセルドルフで行われる国際製パン・製菓総合見本市で実施されるibacup (2012)の日本代表。2023年は代表監督を務める。

 

坂田純一(さかた じゅんいち) ウルス/クマパン屋

1998年株式会社モンタボー入社。店長、統括マネジャー、GMを務め、2006年に退社。その後都内のベーカリーを経て、2015年8月に藤沢市片瀬に「ウルス/クマパン屋」を開業。食事パンを中心に、店主の作りたいパンを作っている。

 

鈴木美影(すずき みかげ) ケノヒノパン

東京都北区出身。料理人としてのキャリアを歩んでいたが、パンの魅力にはまりベイカーに転向。下町の名店「ロワンモンターニュ」(王子※現在閉店)にて技術を修得。「メゾンカイザー」などでの修業経験を持つ夫の崇志さんとともに、中野区南台商店街に「ケノヒノパン」を開業。ハード系のパンを中心に、日常の食卓にのるパンを提供している。

 

中村友彦(なかむら ともひこ) マンダリンオリエンタル 東京

東京・台北のジョエル ロブション氏のベーカリー部門で約12年にわたり研鑽を積む。現在は「マンダリンオリエンタル東京」シェフベイカーとして同ホテル館内のすべてのパンを手掛ける。同ホテルの総料理長ダニエレ・カーソン氏の影響を受けイタリア発酵菓子の奥深さに魅了され、現在は年間を通して季節ごとのパネットーネを製造販売している。

 

 

なお、最優秀作品となった秋元英樹さんのパネットーネは、後援の駐日イタリア大使館で開催されたクリスマスパーティで、締めくくりのデザートとして登場。 イタリア大使始め、ゲストたちに楽しんでいただきました。

後援:駐日イタリア大使館

協賛(五十音順):株式会社ウィル、株式会社ツジ・キカイ、株式会社ニップン、ルーツ貿易株式会社

撮影:ミヤジシンゴ