PANETTONIAMO 2020 レポート  パネットーネ11種類比較テイスティング全記録

2020年12月20日(日)、パネットーネソサエティ初の比較テイスティング会を実施。会場は、池ノ上のぺぺロッソ。参加者には、シェフソムリエ、藤本智さんによるワイン、あるいはソフトドリンクペアリングを選んでいただきました。

パネットーネは全部で11種類。イタリア直輸入7種、日本製4種を同類にグループ分けして比較を試みました。結果、香り・味わい・食感にこんなに違いがあるものかという発見、ドリンクペアリングの面白さという発見がありました。ドリンクとのペアリングで、こんなにたくさんパネットーネを食べ続けられるものか!と藤本ソムリエのペアリングに唸り、また、グループ別比較試食の間に挿入した、ぺぺロッソのスペシャルエディションの生ハム、クリスマス料理のトルッテリーニ・イン・ブロードも良いアクセント&美味でした。下記テイスティングノートは、パネットーネソサティメンバーの備忘録ですが、ドリンクの合わせ方も含めて、今後の参考にしていただければと思います。

パッケージもパネットーネの見どころの一つ。
この日の参加者限定で配布されたパネットーネ テイスティング ノート

グループA  クラシックパネットーネ
発祥地ミラノに倣い、フィリングはレーズンと柑橘のオレンジピール。伝統製法に則った自家製発酵種をうたっている作り手のを中心に。
カンテリーノ(ピエモンテ)のパネットーネは、リンゴのシロップ漬けを用いており、ミラノのクラシックタイプではないのですが、味わいが非常に繊細なためあえてのトップバッターとしました。

左から1.カンテリーノ  2.ムッツィ・トンマーゾ  3.ボニファンティ

1.カンテリーノ Canterino 伊・ピエモンテ州 1kg
ピエモンテ州ビエッラにあるバール・パスティッチェリア・カンテリーノは、イタリアの朝食の定番、ブリオッシュ(日本のブリオッシュとは違っていわゆるクロワッサンです)が有名な人気店。マリオ・カンテリーノ氏が試行錯誤の上完成させたパネットーネは、角切りしたリンゴを水と砂糖に200日間漬け込んだフランス式シロップ漬けを使用。毎年ファンを増やしている数量限定輸入品です。 輸入元/オルトレヴィーノ

(テイスティングノート)
□見た目
薄い黄色。中小サイズの気泡。リンゴのシロップ漬けがふんだんに入っています。

□香り
リンゴのフレッシュな香り、バター、卵の豊かな香り。パネットーネの典型的な乳酸発酵の香りとはまた異なる印象でした。

□触感
かなりしっとり。

□味わい
いくらでも食べられる軽快さ。リンゴ産地の郷土菓子、シュトゥルーデルを彷彿とさせる雰囲気もあり。

(アルコールペアリング)
フランツ・エッゲル スィドロ メーラ イン バリック
Egger Franz Sidro alla Mela in Barrique
リンゴ合わせでシードル。瓶内二次発酵で非常にドライ。酸味の強いリンゴを使用している。パネットーネと合わせてリンゴの豊かな香りに包まれるようなペアリング。

 

2. ムッツィ・トンマーゾ/クラッシコ MUZZI TOMMASO/CLASSICO 伊・ウンブリア州 1kg
1795年、ウンブリア州フォリーニョに創業のアンティカ・パスティッチェリア・ムッツィを母体とする製菓会社のブランド。伝統製法を守りつつ製造。/輸入元 イータリージャパン

(テイスティングノート)
□見た目
濃い黄色。気泡中程度がまばら。レーズンとオレンジピール、典型的なパネットーネの様相。

□香り
甘いバニラとフルーツ香。パネットーネらしい乳酸発酵の香りもあり。

□触感
ややしっとり。柔らかい感じではない。

□味わい
甘さしっかり。イメージするパネットーネらしさ。甘味とヨーグルトの様な甘酸っぱさも少々。食べ応えあり。わかりやすい味わい。

(アルコールペアリング)
フェルゲッティーナ DOCG フランチャコルタ エクストラブリュット
Ferghettina DOCG Franciacorta Extra Brut 2012
イチゴのようなチャーミングな香り。ナッツやトースト香も。典型的なパネットーネと合わせやすい。甘さも感じながらドライな仕上がり。

 

3. ボニファンティ/ミラネーゼ バッソ BONIFANTI/MILANESE BASSO 伊・ピエモンテ州 1kg
ピエモンテ州トリノに本拠地を置く製菓会社。バッソは背が低いタイプの形状。様々なタイプのパネットーネを手がけている。 輸入元/イータリージャパン

(テイスティングノート)
□見た目
濃い黄色。気泡は大小不規則。レーズンとオレンジピール、典型的なパネットーネの様相

□香り
乳酸発酵が進んでやや味噌っぽい香り。熟成香を感じる。

□触感
柔らかさあり。

□味わい
発酵が進んだ香りで甘さが抑えられている印象。

(アルコールペアリング)
ダミヤン ポドヴェルシッチ IGT ヴェネツィア ジュリア カプリャ
Damijan Podversic IGT Venezia Giulia Kapjia
自然派。シャルドネ40%、フリウラーノ35%、マルヴァジア・イストリアーナ25%。遅摘みとマセラシオン由来の黄色い完熟フルーツ(黄桃・マンゴー・パパイヤ)の華やかさと濃密さに対して味わいは非常にドライで、パネットーネの甘さを抑え、香りを楽しませてくれる。余韻もしっかりあり、パネットーネと並走する。

 

グループB  コンテンポラリー フィリング
フィリングにミラノタイプのクラシックの典型、レーズンとオレンジピール以外を使用したものを集めました。主にフルーツのバリエーションが多い。

左から4.ムッツィ・トンマーゾ  5.ボニファンティ  6.シニフィアン・シニフィエ

4. ムッツィ・トンマーゾ/ アマレーナ ファッブリ MUZZI TOMMASO/AMARENA FABBRI  伊・ウンブリア州 500g    輸入元/イータリージャパン


(テイスティングノート)
□見た目
黄色。小さな気泡が不規則に見られる。大粒のチェリー。

□香り
乳酸発酵の香りよりも、チェリー(アマレーナ)の香りが強い。

□触感
やや乾いた印象。

□味わい
口どけは中程度。チェリーが瑞々しく(やや水っぽい?)生地はやや乾き気味で、これをよしと捉えるかバランスが悪いと捉えるか。

(アルコールペアリング)
カンティーナ デッラ ヴォルタ DOCランブルスコ ディ ソルバラ リモッソ
Cantina della Volta DOC Lambrusco di Sorbara Rimosso
ランブルスコ品種の中でも最も酸があるソルバーラ。甘みの強いパネットーネ、香りにベリー感もありチェリーとの相性も非常によい。ランブルスコの酵母感とパネットーネの乳酸発酵の香りが重なりやすい。

 

5. ボニファンティ/マロングラッセ BONIFANTI/MARRON GLACES  伊・ピエモンテ州 1kg     輸入元/イータリージャパン


(テイスティングノート)
□見た目
薄い茶色。小〜中の気泡がやや見られる。粒状のマロングラッセが全体的に入っている。

□香り
乳酸発酵の進んだ香りと栗のホックリした香り。

□触感
柔らかさあり。

□味わい
マロングラッセの甘く温かみのあるホコホコした味に、パネットーネの酸味が少し。全体的に落ち着いた深みのある味。マロングラッセはピエモンテの名産菓子で郷土性あり。

(アルコールペアリング)
バーリョ・クラトロ・アリーニ1875DOCマルサラ・スペリオーレ・リゼルヴァ・ストーリカ1995
Baglio Curatolo Arini 1875 DOC Marsala Superiore Riserva Storica 1995 (ダブルマグナム)
品種:グリッロ、カタラット。酸化熟成ならではの完熟し、少し枯れたようなアプリコットの甘さと酸味、アニスのようなスーッとたハーブ感。このワイン自体が複雑で単体でも楽しめる。マロングラッセのコクとも非常に合う。

 

6. シニフィアン シニフィエ/メープル&ポワール Signifiant Signifié 東京 490g
高加水のパン製法で知られる志賀勝栄さんが、水の代わりにバター、牛乳、生クリーム、卵で練り上げたリッチなパネットーネ。2019年にはパネトーネワールドカップ出場。一年中フレーバーを変えてパネットーネを製造している。今回のフィリングは今年のクリスマス限定の新作。メープルと洋梨とピーカンナッツ。

(テイスティングノート)
□見た目
薄い黄色。大・中・小緻密な気泡が見られる。縦型気泡も。

 

□香り
パン酵母の良い香り。いわゆるパネットーネらしい乳酸香とはまた違う方向性だが、サワーブレッド系の香りか。

□触感
柔らかさあり。

□味わい
しっとり感があり、口どけも非常によい。技術力あるパンの血筋を感じる味わい。梨、メープル、ピーカンナッツのバランスも繊細で日本らしい奥ゆかしさと綺麗な味。イノヴェイティブ感あり。

(ペアリング)
ファットリア モンティチーノ DOCG アルバーナ ディ ロマーニャ コドゥロンキオ
Fattoria Monticino DOCG Albana di Romagna Codronchio
貴腐菌をつけた遅積みブドウから醸造されたアルバーナ。ソーテルヌのような圧倒的な甘さはなくドライでそれが心地よく繊細な甘さのパネットーネに合う。ドライフルーツのニュアンス。

 

C コンテンポラリー   チョコレートタイプ
チョコレートを使用したパネットーネ。レーズンではなくチョコレート&オレンジピールの組み合わせや様々なフルーツとの組合せなど。最近はチョコレートを上掛けするタイプも増えている。

左から7.ムッツィ・トンマーゾ(オレンジ・チョコレート)8.ムッツィ・トンマーゾ(洋梨・チョコレート)9.さくらぐみ

7. ムッツィ・トンマーゾ/アランチャ・チョコラート MUZZI TOMMASO / ARANCIA CIOCOLATO 伊・ウンブリア州 500g 輸入元/イータリージャパン

 (テイスティングノート)
□見た目
黄色。小さな気泡が見られる。オレンジ風味のクリームにチョコチップがふんだんに入っている

□香り
乳酸発酵の香りより、チョコレートの甘い香りがインパクト。

□触感
縦に裂けるような繊維感はあまりない。

□味わい
口どけは中程度で溶けるというよりもそれなりの食感。イタリアらしいがっつりした甘さのチョコレート風味。

(アルコールペアリング)
カンティーナ デッラ ヴォルタ DOCランブルスコ ディ ソルバラ リモッソ
Cantina della Volta DOC Lambrusco di Sorbara Rimosso
ランブルスコ品種の中でも最も酸があるソルバラ。甘みの強いパネットーネ、香りにベリー感もありチョコレートとの相性もよし。

 

8. ムッツィ・トンマーゾ/ペレ・エ・チョコラート MUZZI TOMMASO / PERE E CIOCOLATO 伊・ウンブリア州 500g 輸入元/イータリージャパン

  (テイスティングノート)
□見た目
比較的小さな気泡。チョコレートチップと洋梨の砂糖漬け。

□香り
乳酸発酵の香りよりチョコレートの甘い香りがインパクト。強い香気成分。

□触感
縦に裂けるような繊維感はあまりない。

□味わい
口どけは中程度のやわらかさ。イタリアらしいがっつりした甘さのチョコレート風味。

(アルコールペアリング)
ラルコ DOC ヴァルポリチェッラ リパッソ クラシコ スペリオレ
L’Arco DOC Valpolicella Ripasso Classico Superiore
カカオやアマレーナチェリーのような、チョコレートと同調する風合いあり。なめらかなタンニンとスムースな酸がパネットーネの甘みとのバランスをとる。

 

9. さくらぐみショーショー Scio Scio  兵庫  600g
兵庫県赤穂市の有名ピッツエリア「さくらぐみ」のオーナーシェフ、西川明男さんによる伝統的な製法のパネットーネ。種類はレーズンとオレンジピールのクラシックタイプと、アレンジバージョンのオレンジ&チョコレート。チョコレートは上掛けでビタータイプ。

(テイスティングノート)
□見た目
外側はチョコレートコーティング。中身は白っぽい黄色。大中の気泡が見られる。オレンジの砂糖漬け。

□香り
イタリア産と比較して甘い香りは抑えられたチョコの香りにオレンジの香り。

□触感
しっとり感あり。

□味わい
口どけは中程度のやわらかさ。チョコレートコーティングによる外側の食感がさっくりしてノーマルと全く違う印象。中のしっとり感もチョココーティングで守られている印象でコントラストも良い。乳酸発酵のニュアンスもあり、全体のバランス良い。

(アルコールペアリング)
ヨルケDOCプリミティーボ ディ マンドゥーリア リゼルヴァ
Jorche DOC Primitivo di Manduria Riserva
12ヶ月間バリックとアンフォラ、後に3ヶ月の瓶熟成。樹齢は50年。凝縮感、複雑味があり完熟の甘さもあるがキレもある。カカオやタバコのようなスパイス感、スモーキーさがありチョコレートタイプのパネットーネと好相性。

 

グループD  発酵種ハイブリッドタイプ
伝統的には、小麦+水だけで元となる母種を作り、新たなパネットーネ生地に継いでいく。母種をいい状態でキープするには手間暇も時間もかかるため、近年はメーカーが安定した酵母を用いたタイプも販売されている。

上から10.トラットリアッチャ  11.フィオッキ

 

10. ラ・トラットリアッチャ La Trattodiaccia  東京 920g
フィリングはレーズンとオレンジピールを使ったクラシックタイプだが、発酵種はイーストとパネックス社のパネットーネ種を混合したハイブリッド製法。毎年発酵種の配合を変えている。パネットーネ作りは今年で3年目。

(テイスティングノート)
□見た目
白っぽい黄色。気泡はやや詰まった感じ。レーズン。

□香り
乳酸発酵の香りというよりレーズンパンのような香り。

□触感
少し乾燥気味。

□味わい
優しい味わいで発酵由来の甘すっぱさは弱い。味を何か足したくなる感じ。ジェラートやザバイオーネクリームなどを添えるとバランスが取れる。

 

11. フィオッキ Fiocchi  東京
特別参加。パネットーネに惚れ込んだオーナーシェフの堀川亮さんは、パネットーネ作りに奮闘する様子を日々SNSでレポートしファンを増やしている。毎年進化するパネットーネは今年で4年目。発酵種は、自家製のヨーグルトから起こした酵母とイタリア産小麦粉で起こした発酵種を混合したハイブリッド。

(テイスティングノート)
□見た目
濃い黄色。大中小様々な気泡が全体に見られる。縦長気泡もあり。柑橘複数種のピールとレーズン。

□香り
乳酸発酵の香り。柑橘類のフレッシュで甘やかさのある心地よい香り。

□触感
しっとり感あり。ちぎると綺麗に縦に裂ける。

□味わい
優しい味わいだが深みもあり。乳酸香に複数の柑橘ピールの甘みや苦味、酸味が広がる。

(アルコールペアリング)※10、11共通
プルノットDOCGモスカート ダスティ
Prunotto DOCG Moscato d’Asti
イタリアでパネットーネのお供として最も定番と言われるスプマンテ。レーズン、柑橘とマスカット香の相性がよく、良い意味で無難に合う。甘みを泡立ちが中和するイメージ。

ペアリングしたワイン
ぺぺロッソがトスカーナの生ハム工房で特注している生ハム。ネットリ、ムッチリ、香り高い。比較テイスティングのグループAとBの間に供された。
イタリアのクリスマス料理の定番といえば、トルッテリーニ・イン・ブロード。高貴なる鶏出汁。比較テイスティングのグループBとCの間に供された。