パネットーネ大学その3 生地作り

「発酵容器の中で歌えば生地は完成。つまり、最終段階で音がなれば成功」と言われる生地作り。

まずはリエヴィト・マードレの準備から。水に浸けてしばらく置き、そして30度でのリフレッシュメントを3時間おきに3回行います。そして夜、準備を終えたリエヴィト・マードレをはじめ、材料をきちんと計量。プリモ・インパスト(またはプレインパスト。準備生地または第一生地)の仕込みを開始します。粉、水、砂糖、バター、卵、リエヴィト・ナトゥラーレを混ぜ合わせて練るのですが、なるべく速やかに淀みなく進めることで、粉に過度のストレスを与えず、生地の温度上昇を防ぐことができます。生地中の材料の全てがしっかりと混ざり合って結びつき、ミキサーのボウル内壁を打ち付ける音が聞こえてきたら練り上がり。完成した生地は、最高で26度の温度を保ちながら、3倍になるまで発酵させます。第一の生地においてもその次の生地においても、粉が材料を吸収する時間を十分に確保することがポイント。

セコンド・インパスト(またはインパスト。本生地またな第二の生地)は翌朝。前夜に練り上げ、一晩かけて発酵した第一の生地に、残りの粉を加え、滑らかで弾力性のあるグルテンの網が形成されるように練ります。ここで重要なのがミキサーはダブルアーム(トゥッファンテtuffante)を使うこと。製パンで一般的に使用される螺旋状のシングルアーム(スピラーレSpirale)は摩擦により温度が上がりすぎる危険性があるため、パネットーネ作りではダブルアームを用いて生地により多くの空気を含ませ、温度上昇を防ぎます。このミキシング工程は急がず必要な時間をかけること、そして、グルテンの膜ができているか確認することが重要です。もし、生地がちゃんと繋がっていなければ、正しい発酵ができなくなってしまいます。
本生地に粉を投入した後は、そのほかの材料を速やかに淀みなく、正しい温度を一定に保って混ぜていきます。まず、卵黄。卵黄にはレシチンが含まれているので、生地を滑らかに均一にする手助けとなります。卵黄の次には、砂糖を加えますが、もし生地の繋がりが悪いと砂糖によって生地が分解してしまうので、それを防ぐには良質な粉を使用することが第一。さもないと、砂糖に続いてバター、塩を加えていくうちにグルテンの網が切れてしまうのです。
バター、塩、バニラは同時に投入。バターは砂糖よりさらに水分吸収率の高い塩を湿らせ、さらにバターの脂肪分がバニラの香りを取り込みます。バニラ以外の香料は自然由来のものであっても不要。例えばレモンの皮も、パネットーネを切った瞬間は爽やかな香りをもたらしますが、時間が経つにつれて酸化する上、発酵物に悪影響を及ぼす可能性があります。パネットーネを食べると胸焼けするという場合、それは往往にして香料が原因であることが多いのです。

最後にフルーツの砂糖漬けとレーズンを生地に少しずつ混ぜ込みます。もし、シロップ漬けフルーツを使う場合は前夜にシロップの水気を切っておき、レーズンも前夜のうちに10分ほど水につけて戻し、水気を切ってから使用します。

生地が練りあがったら、ミキシングのストレスから生地を解放するために30分ほど寝かせます。こうすることでたんぱく質の緊張が解け、続く計量、分割、成型の間、正しく発酵が進むのです。