パネットーネ大学その7 冷却

焼き上がったかどうか確認するため1個取り出し、その中心に温度計を刺して92度に達していたら、急いで全部を取り出して、できるだけ早く逆さに吊るさなければなりません。焼き上がったばかりの熱い状態ではグルテンの網が不安定なので、中の油脂による虚脱現象が進み、しぼんでしまいます。逆さにすることでこれを防ぐのです。

逆さにしてそのまま自然に冷まし、10〜12時間かけて余分な水分を蒸発させます。インダストリアルな製造現場でもこの作業は欠かせず、最盛期には果てしなく長い逆さ吊りの列が連なります。かつて、とあるメーカーが冷却時間を短縮しようと40℃程に設定した“冷却トンネル”を開発しましたが、中の水分が十分抜けきらず、カビを発生させる危険性が高まることが判明。この自然冷却工程はアンタッチャブルな聖域としてどの作り手も守っています。

十分に時間をかけて室温に冷めたパネットーネは、いよいよ最後の工程、包装に移ります。ポリプロピレン製の袋にいれて酸素が入らないように口を閉じます。パネットーネが最も美味しくなるのは、完成してから4〜5日後。アルティジャナーレ(手作り)のクラシックタイプ(ミラノ伝統スタイル)であれば賞味期限は1ヶ月ほどです。チョコレートを使ったバージョンでは、チョコレートが水分を吸収するため冷却時間を短くするのが常で、それゆえ日持ちはもっと短くなります。