オンラインセミナー「アレンジで楽しむパネットーネ」レポート

去る3月17日、パネットーネ・ソサエティとイタリアのパネットーネ「キオストロ・ディ・サロンノ」とのコラボレーションによるオンラインセミナーを開催いたしました。テーマはすでにお伝えした通り、パネットーネを使ったアレンジレシピ。「そもそも、パネットーネはそのまま食べても美味しいのに、なぜわざわざアレンジするの?」という声も聞かれますが、イタリア現地では最近、パネットーネを使ってオリジナルな楽しみ方をする人が増えており、「キオストロ・ディ・サロンノ」はそうしたムーブメントを踏まえ、パネットーネの特徴をより理解してもらうきっかけにしてもらいたいとアレンジレシピ・プロジェクトを進めています。

キオストロ・ディ・サロンノのアジアエリア・マネージャー、チェチリア・モレッティさんと、イル・プレージョの岩坪滋シェフ。

今回、レシピを考案してくださった「イル・プレージョ」の岩坪滋シェフも、普段はパネットーネはそのまま提供していますが、あらためてパネットーネについて色々と考える機会になったと言います。甘い香りや独特のテクスチャーをどのように生かし、あるいは変化させることができるのか。どんな素材と組み合わせると、パネットーネの隠れた特性を引き出せるのか。さまざまなアプローチから試作した結果、披露していただいたのが、以下の3品です。

 

 

朝食に
パネットーネ・アル・リモンチェッロのフリッタータ

野菜やハム、チーズなどあり合わせのものを卵でまとめて焼き上げるフリッタータは、イタリアの家庭料理の定番メニューの一つ。ナポリではパスタもフリッタータにしますし、トスカーナではアーティチョークのフリッタータは別名トルティーノとも呼び、お馴染みのお惣菜です。岩坪シェフはリモンチェッロクリーム入りのパネッットーネを使い、その甘酸っぱい風味を一段と引き立てるため、フレッシュレモンをプラス。さらに、プロシュートを添えて、ドルチェ・サラートのバランスを図りました。細かく刻んだレモンの果肉の爽やかな酸味、そしてルーコラのほろ苦さがアクセントとなった、目覚めの朝にぴったりの春色フリッタータです。

 

アペリティーヴォに
パネットーネ・パン粉のコトレッタ

甘いパンとサラミやチーズを組み合わせるのは、イタリアの伝統的な食べ方。例えば、トスカーナのパン・ディ・ラメリーノ(ローズマリーとレーズンの甘いパン)にはフィノッキオーナやモルタデッラとかペコリーノを挟むのですが、これが実によく合うのです。パネットーネも生ハムを巻いたり、ストラッキーノチーズを塗るだけでワインのつまみになりますが、岩坪シェフはパネットーネのテクスチャーに注目。空気をたっぷりと含んだパネットーネは、少し乾燥させると手でこするだけでサラサラのパン粉状態になるのです。今回はこのパネットーネ・パン粉をひと口大にカットした仔牛肉にまぶし、コトレッタに仕立てました。パネットーネのうっすらとした甘み、忍ばせたパルミジャーノ・レッジャーノの鹹味と淡白な仔牛肉との組み合わせは絶妙。パネットーネを崩した時に残しておいたオレンジピールの華やかな香りとレーズンのコクが加わると、味わいにくっきりとしたエッジが現れます。スパークリングワインやフレッシュな白ワインと合わせたい一品となりました。

 

ドルチェに
パネットーネのブディーノ

ブディーノ、つまりプリンですが、伝統的なプリンの一つといえば、パンプディング。固くなったパンの再利用法としてはフレンチトーストと並ぶ王道アレンジです。塩の効いたバゲットとは違って、しっかりと甘みを持ったパネットーネは、イタリア人好みの甘いデザート・ブディーノにぴったり。岩坪シェフはさらにアマレット・リキュールを加え、甘みをプラスしつつほろ苦さを潜ませて立体感を与えました。かなりのリキュールを注いでも、気泡たっぷりのパネットーネはものともせずに全て吸収。卵液と共に蒸し焼きにしたブディーノとなって一晩過ごすと、そのリキュールの香りを纏ったパネットーネはシルクのようななめらかさと濃厚なクリーム感が畳み掛けてくるようなデセールに変化していました。カリカリのアマレッティ・ビスコッティを散らすと、食感はもちろん、香りもより一層複雑に。しっかり甘くて満足度の高い、イタリアらしいデセールです。