イタリアの食の総合メディア、ガンベロ・ロッソが今年もパネットーネのテイスティング評価を発表しました。今回は2部門に分け、1つはアルティジャナーレ(職人手作り)、もう1つは中規模菓子メーカー製で、それぞれトップと、トップは逃したものの優れて美味しいと評価されたパネットーネを公表しています。
まず、アルティジャナーレは、職人とひと言でまとめられていますが、作り手の内訳は菓子職人、パン職人、リエヴィティスティ(発酵専門職人)、ピッツァイオーロ、料理人、ジェラート職人など多彩。ブラインド・テイスティングを行ったのは40のパネットーネで、保存料など無添加のものです。工場に比べはるかに規模の小さい厨房で、手作りのパネットーネを手がけることは実際にとても難しいと言います。まず環境(空中の湿度、温度、厨房内の匂い、バクテリアなど)に影響されやすく、レシピはあってないようなものであり、失敗の可能性はいたるところに潜んでいるという厄介な仕事です。
テイスティング対象となったのは、オンラインショップで購入可能または遠隔地発送を請け負っている作り手による柑橘の砂糖漬けとレーズンを使ったクラシックタイプで、背の高いミラノタイプ、背の低いピエモンテ(またはガルップ)タイプ、また上面にアイシングが施されたものも含まれます。さらにモノグリセリド及びジグリセリド(この場合、乳化剤を示す)不使用を掲げるパネットーネに限定されました。アルティジャナーレでは乳化剤を使用しないのが基本で、時間とともに固くなり、賞味期限も1〜2ヶ月と短くなりますが、それも含めて手作りの特徴と捉えられます。対して大量生産されるパネットーネは、クリスマスシーズンよりもかなり前から生産を開始するため乳化剤の使用は必須です。
テイスティングに集められたパネットーネは大きく2つの系統に分かれました。1つはここ数年の大きな潮流となっている、バターもバニラもフルーツもたっぷり、ふんわり柔らかなタイプ。もう1つはパネットーネ本来の姿、つまりバター、フルーツ、バニラを加えてリッチに仕立てながらもあくまでもパンを思わせるもの。最新の傾向として、このタイプに回帰する職人が増えているようです。前者のパネットーネは、生地を指で裂くとバナナの皮を剥くように繊維に沿って長く伸びる(フィランテと呼ばれる)のが特徴で、後者は指で引っ張るとパンのようにちぎれ、頬張るとパンを噛みしめる時のような弾力を感じる(パノーゾと呼ばれる)のが特徴です。
評価項目は「見た目(外側、内側)」「香り(生地、フルーツ)」「味わい(生地、フルーツ)」「全体評価」を記し、それらを総合して100点満点で点数をつけます。6人の審査員(ジャーナリスト、菓子職人、料理人、オリーブオイルテイスター、製菓コンサルタント等)がそれぞれのパネットーネに与えた点数のうち最高点と最低点を排除して合計し、それを審査員数で割った点数が評価点となります。
アルティジャナーレ部門2021年1位
レナート・ボスコ Renato Bosco
ヴェローナ郊外のコンテンポラリーピッツァとパンの先駆者として知られる。均一でこんがりとしたヘーゼルナッツ色の焼き色、内側は鮮やかで艶やかな黄色、均整のとれた縦伸びの気泡が見事な発酵過程を経たことを示す。フルーツの量もたっぷり。香りはバランスよく、綺麗で新鮮、心地良い。次いでフレッシュなバター、バニラ、純粋なフルーツの香りが続く。生地は軽く柔らかく、フィランテで口どけが良く、しっかりと焼き込まれたことがわかる。柑橘、粒の大きなレーズンの余韻がしっかりと残る。(1kg €35)
その他の優れたパネットーネ・アルティジャナーレ
パニフィーチョ・アスコレーゼ Panificio Ascolese
クレメリア・カポリネア Cremeria Capolinea
イル・キオスコ・ディ・フランチェスコ・バッリコ Il Chiosco di Francesco Ballico
パニフィーチョ・ダンジェロ Panificio D’Angelo
ドルチェマスコロ Dolcemascolo
フィアスコナーロ Fiasconaro
パニフィーチョ・フォッラドール Panificio Follador
フラテッリ・ルナルディ Fratelli Lunardi
ガッビアーノ Gabbiano
フォルノ・ジェンティーレ Forno Gentile
グラン・カフェ・ロマーナ Gran Caffè Romano
グルーエ Gruè
オペラ・ヴァイティング Opera Waiting
パスクアーレ・マリッリアーノ Pasquale Marigliano
パスティッチェリア・パトリーツィ Pasticceria Patrizi
フォルナイ・リッチ Fornai Ricci
サル・デ・リゾ・コスタ・ダマルフィ Sal De Riso Costa d’Amalfi
ティリ1957 Tiri1957
中規模菓子メーカーのパネットーネはアルティジャナーレのそれと異なるのは、特徴がそれほど目立たないということと、シーズンのかなり以前から製造するためシェルフライフを長期化する必要から乳化剤を使用すること。材料表に表記されている代表的な乳化剤はE471です。
ブラインド・テイスティングでの評価ポイントは、「発酵具合」「香りの複雑性」「生地(柔らかさ、滑らかさ、歯ごたえ、水分量)」「フルーツ(品質、量)」「全体評価」。
中規模メーカー部門2021年 1位
スカルパート Scarpato
1888年ヴェローナ近郊で創業、パンドーロ、パネットーネ、コロンバ、フォカッチャなど発酵菓子を得意とする。パネットーネは背の低いタイプで、濃いヘーゼルナッツ色の焼き色、十字のクープがくっきりと見える。内側は色が浅く、底面にビスコット色、生地の気泡は細かく、縦伸びの様子が見え、レーズンの粒の大きさは中位でしっかりとした歯ごたえ、砂糖漬け(シチリア産オレンジ、ディアマンテ・チェードロ)は大ぶりで酸味がある。香り良く、牛乳そしてバター、フルーツを感じる。全体的な香りは複雑で綺麗。柔らかく、甘く、噛み応えがある。
その他の優れた中規模メーカー・パネットーネ
マリア・ヴィットリア ダッラーヴァ・ベーカリー Maria Vittoria-Dall’Ava Bakery
コルシーニ Corsini
ジョット Giotto
*パドヴァの刑務所内にある製菓工房。2005年よりパネットーネ製造。