ハート型のパネットーネを贈るバレンタイン

2月の声を聞くとバレンタインの贈り物におすすめ、などというポップが店先に踊るようになります。そもそも、バレンタインを“祝う”習慣の起源はキリスト教以前の時代、2月15日に豊穣や繁殖を祈る祭りが行われていたことに遡ります。キリスト教は、民間で行われていたそうした祭りや儀式をギリスト教的な祝福や儀式に置き換えることで、人々が慣れ親しんだ習慣を損なわず、暮らしの中に定着していきました。その一つがバレンタインです。キリスト教会は2月14日に殉教したヴァレンティーノ・ディ・テルニを聖人とし、これまで15日に行われていた祝祭を14日としてサン・ヴァレンティーノをその守護聖人と定め、ひいては愛を誓う人々の守護聖人ともなったのです。

19世紀には恋人同士で愛のメッセージを記したカードを贈り合うのが習わしとなり、そして20世紀になるとカードだけでなく、さまざまな贈り物をするようになっていきました。日本では女性から男性へチョコレートを贈る日として知られていますが、イタリアではどちらかというと男性から女性へプレゼントを贈ることが多いようです。定番は花、お菓子ならばハート形のチョコレートですが、最近はパネットーネもそこに参入、とりわけ手作りの職人によるバレンタイン・パネットーネが増えています。

例えば、通年パネットーネを手がけているヴェネト州のオリヴィエリ1882の「サンヴァレンティーノ」は、カカオ55%のチョコと野いちごを使ったハート型のちょっと小ぶりなパネットーネ。ピンク色のボックスもかなりフェミニンです。

また、パネットーネ・パンドーロの専門店として知られるバジリカータ州のティリが手がける「ドルチェ・クオレ・サン・ヴァレンティーノ」は、森のベリー(レッドカラント、ブラックカラント、ストロベリー、ブラックベリー、ブルーベリー)を使い、表面にもホワイトチョコとベリーをたっぷりあしらっています。

エミリア・ロマーニャ州のジェラテリア、カポリネアの「リエヴィタート・デル・アモーレ」は見た目はクラシックでシンプルなパネットーネですが、生地にマンゴー果肉を練り込み、桃のシロップ漬け、ヘーゼルナッツチョコも加え、ふんわりとした生地からは熟した果物の香りが立ち上ります。

どれもみな500gと小ぶり。バレンタインの1日で一気に食べてしまうことを想定しているのでしょう。そのほかにもさまざまな作り手がバレンタイン・パネットーネを販売していますが、共通するのは、チョコレートと、ベリーやチェリーなどの赤いフルーツを使うこと。そして、表面にピンク色のチョコレート・アイシングを施したり、ハート型のチョコレートをあしらったり。クリスマスシーズンよりもドルチェ指数が一段と高まるようです。

↓Olivieri 1882のSANVALENTINO