パネットーネに見えるけれどフォカッチャ? 違いはどこに

イタリアでは、一見パネットーネのようなのに“フォカッチャ”や“フォカッチャ・ドルチェ”と呼ぶことがあります。それは、イタリアでは、パネットーネの定義が国によって定められているため、その定義に当てはまらないものはパネットーネと呼んで販売することができないからです。

では、パネットーネと呼べないものはパネットーネに劣るものかというと、そうとは断定できません。作り手によっては、自らが目指す“より良いもの”が国の定義に当てはまらないため、パネットーネとは呼ばないということもありうるからです。

フォカッチャ・ミモザ。Foto:Alajmo

「リエヴィト・マードレとイタリアのパネットーネのマエストロ・アカデミー」(Accademia dei Maestri del Lievito Madre e del Panettone Italiano)の設立メンバーの一人である菓子職人クラウディオ・ガッティは、パネットーネの他に、フォカッチャと呼ぶ発酵菓子を作っています。このフォカッチャはパネットーネと同じ形、同じ発酵、同じ材料を使っていますが、油脂の割合がパネットーネは最低でも16%でなければならないのに対し、クラウディオ・ガッティのそれは11.3%であるため、パネットーネとは呼ばないと説明しています。美味しさを保ちながらも油脂を減らすことでより軽く仕立て、ヘルスコンシャスな人々のニーズに応えているのです。
季節に応じて、オリジナルのフォカッチャを作っているのは、三つ星レストラン「レ・カランドレ」などを営むアライモ・ファミリー。この春は復活祭のコロンバとしてチョコレート&スパイスとバニラ&アプリコットの二種類のほか、フォカッチャ・インテグラーレ(全粒粉のフォカッチャ)を発売。油脂にはオリーブオイルを使っています。また、3月5日から8日まではフェスタ・デッラ・ドンナ(3月8日の女性の日)に向けたフォカッチャ・ミモザも。バターと柑橘砂糖漬け、アーモンドを使い、ネロリ、サフランで香りをつけたフォカッチャで、表面はうっすらレモンイエロー。別名ミモザ・デイとも呼ばれるこの日のための特別限定販売です。
伝統的なパネットーネの基本的な作り方を土台にしながらも、作り手の自由な発想で生まれるこうしたイノベーティブな発酵菓子はこれからも増えていくでしょう。