2019年2月、中目黒にオープンしたスターバックス®︎ リザーブロースタリー 東京内に登場したミラノの人気ベーカリー<プリンチ®︎>。昨年のクリスマスシーズンには真っ赤なパネットーネBOXも話題に。<プリンチ®︎>でヘッドシェフを務める松田武司さんにパネットーネのお話を伺いました。
イタリアのパン職人との出会い
松田武司さんと言えば、パン好きな方は元<ヴィロン>のヘッドベイカーとしてご記憶の方も多いはず。フランスパン出身の松田さんがイタリアパン、そしてパネットーネに興味を持ったきっかけは、5年ほど前に日本で行われたイタリアのパン職人組合「リッチモンドクラブ」によるイタリアパンの講習会でした。それまでの松田さんのパネットーネの印象は「発酵菓子なのに目が詰まっていてパサパサしている」というもの。それが「講習会で食べたパネットーネは、今まで知っていたパネットーネと全然違いました。長時間発酵独特の乳酸の香りがあり、食感も良かった」。この時、組合の職人と知己を得たことが、松田さんをイタリアパンの世界へ、<プリンチ®︎>へと導く遠因となります。
目指すパネットーネ像
現在松田さんが目指すパネットーネは「発酵菓子らしい乳酸の良いフレーバーがあり、しっとりとした食感。生地が垂直に伸びて縦に綺麗に裂ける。そして口溶けが良いこと」です。実際に食べた印象ですが、生地の滑らかさ、食べ心地の良さが非常に印象的。しっとりとしているのですが、ただ柔らかいというのとも違って、指で生地を押すとゆっくりと戻る繊細でしなやかな弾力性があります。「粉は全て国産の小麦粉を配合して、目指す食感が出るように工夫しています」。イタリアと日本を比較すると、製粉は全般的に日本の方が、目が細かくて生地も密になりやすいため、粗挽きの粉を配合し、香りを出すために灰分の高い粉も混ぜてと、実に手がかかっています。
パネットーネのベースを作る自家培養の発酵種リエヴィトマードレも、本場ミラノの<プリンチ®︎>から受け継いだ伝統的なレシピを元に、日本で一から起こし、毎日リフレッシュ、種継ぎを繰り返しています。松田さんにとって「パネットーネは、パンの原点となる種作りの重要度が高い発酵菓子。そして、種の管理の仕方、日々の生地の違いへの考察など、パン職人として勉強しがいがある対象」と言います。
イタリアの食文化としてのパネットーネ
そして「東京で<プリンチ®︎>のパネットーネを紹介する意義は、イタリアの食文化を伝えることにある」と松田さん。ミラノ本店では、チョコレート味などコンテンポラリータイプのパネットーネも焼いていますが、東京の<プリンチ®︎>では、「まずはクラシックタイプのホリデーパネトーネを皆さんに知っていただきたい」。クラシックなパネットーネは、中にオレンジピールとサルタナレーズンが入るのですが、<プリンチ®︎>ではイタリアで定評のあるアグリモンタナ社のピールを使用しています。「オールシーズン、色々なパネットーネがイタリアでも作られるようになってきましたが、パネットーネの生まれたミラノにある<プリンチ®︎>では、“本来クリスマスの菓子”という考えから、クリスマスシーズンのみの販売。ホリデーというのもクリスマス休暇を指す言葉です」。
今回の伊勢丹新宿店でのパネットーネの紹介は、日本でまだまだ知られていない本物のパネットーネを、クリスマスシーズンに向けて多くの方々に知っていただきたいという意図を持った特別な出店とのこと。ですから、クリスマス本番にもホリデーパネトーネを食べてくださいね。
<プリンチ®︎>の伊勢丹新宿店イタリア展での販売は、ECサイトでは9月8日〜9月20日午前10時まで、イタリア展会場では9月9日〜9月13 日です。